S社のネットワークは,LAN1〜3の三つの支線と主系及び従系の二つの幹線から成っている。支線は通信速度が10Mビット/秒で,パソコン,サーバ,プリンタなど(以下,総称してPCという)が接続されている。幹線は通信速度が100Mビット/秒で,ルータを介して各支線と接続されている。従系幹線は予備であり,通常は主系幹線を使用する(図参照)。
ルータ同士は経路情報を交換し合っており,それぞれのルータはほかのルータから通知される経路情報を常時モニタしている。あるルータからの通知が一定時間以上途切れると,そのルータは故障したものと見なす。ルータ同士が交換し合う経路情報には,ネットワーク上の距離を整数で表したホップ数が含まれている。ホップ数とは,ある支線から最初にそのルータを経由してほかの支線に到達するまでの間に通過しなければならない最少のルータ数である。この際の通過経路は,一度通った支線又は幹線を再度通ることがないように選ばれる。ある支線のPCがほかの支線のPCと通信する場合,PCは最少のホップ数で通信できるルータを選択する。そのため,ルータはそのルータに接続している支線のPCに経路情報を通知する。すべてのルータが正常な場合,主系のルータ(1A,2A,3A)だけが経路情報をPCに通知し,従系のルータ(1B,2B,3B)は通知しない。しかし,ほかのルータの故障を検出すると,従系のルータも経路情報を通知し始める。ルータがPCに通知する経路情報は,“目的の支線名:ホップ数”で表す。例えば,すべてのルータが正常な場合,ルータ1AがLAN1のPCに通知する経路情報は, LAN2:2,LAN3:2になる。なお,各支線相互間(各支線内も含む)で転送される平均データ量は表1のとおりである。
支線 | LAN1向け | LAN2向け | LAN3向け |
LAN1から | 0.3 | 1.0 | 0.6 |
LAN2から | 0.1 | 1.5 | 0.2 |
---|---|---|---|
LAN3から | 0.5 | 1.5 | 0.2 |
設問1 |
|
支線 | 平均データ量 |
LAN1 | ア |
LAN2 | イ |
LAN3 | ウ |
設問2 |
|
||||||||||
ルータ1Aが故障すると,一定時間後,従系のルータも各支線のPCに経路情報を通知し始める。 | |||||||||||
|
|||||||||||
|
|||||||||||
設問3 | ルータ1Aとほかの一つのルータが故障し,一部の支線でレスポンスが悪化したことがある。 次の記述は,このとき発生したレスポンス悪化に関する考察の一部である。 |
||||||||||
|
|||||||||||
なお,このネットワークは,データ量が支線で5Mビット/秒以上,幹線で40Mビット/秒以上になると,急激にレスポンスが悪化する。 | |||||||||||
ルータ1Aが故障して,一定時間経過すると,従系のルータも経路情報を支線のPCに送り始め,その結果,従系幹線が使用できるようになる。したがって,
ルータ2A,3Aなどの主系のルータが故障しても,従系を使用できるので通信上の問題は発生しない。 ある支線から目的とする別の支線への通信を行う場合,ルータ1台だけの故障であれば,“送信側支線−幹線−目的とする支線”という経路で通信すること
ができる。しかし,ある支線の主系ルータとほかの支線の従系ルータが故障すると,一部の支線間では“送信側支線−幹線−う回する支線−幹線−目的と する支線”という経路で通信することになる。 ルータ1A以外に従系のルータにも故障が発生し,その結果,う回路に使用された支線に大量のデータが流れたからレスポンスが悪化したと考えられる。
|
|||||||||||
|
|||||||||||
|
|||||||||||
悪化したものと考えられる。 |