銀河系Q&A  銀河系に関する疑問にお答えします。    

Q1.夜空は、なぜ暗いのでしょう?夜空にはたくさんの星が見えるし、宇宙が無限ならもっと夜空が明るくなるのではないでしょうか?
A1.これはオルベルスの逆説と呼ばれる問題で宇宙論にとって大変重要な意味を含んでいます。
もし、宇宙が無限で恒星の分布も一様であり、恒星の光度も特に偏りがないとすると、確かにもっと夜空(というより昼間もだが)が明るくなりそうです。
何しろ無限の光が地球へ注ぐのですから、これはたまりません。
しかし実際には夜空は暗いのですから、どこか仮説に誤りがあるはずです。
まず、宇宙は無限なのかという問題ですが、現在の考え方では宇宙に果てがあるとは考えられず、我々はかなり遠方まで観測しています。
いわゆるクェーサーと呼ばれる天体がそれです。
次に恒星の分布ですが、我々の銀河系は円盤状の恒星や星間物質の集合体であり、恒星の数も2000億個とさほど!多くはなく、これらの光だけでは夜空を明るくすることは到底できません。
我々が夜空を眺めると天の川(銀河)が見られますが、そんなに明るくはないでしょう。
しかし、さらに遠方には多数の系外星雲(銀河系)が存在していることも分かっています。
これらが我々から遠いものほど明るいとか暗いとかも考えられず、分布も特に偏りがあるともいえません。
もっとも最近の考え方では、宇宙には銀河系が存在しないボイド(超空洞)があり、超銀河団が壁(グレートウォール)のように分布しているということがわかっています。
しかし遠方には銀河系が存在しないということではないので、やはり仮説との矛盾点とはいえないようです。
しかし問題は、我々の銀河系以外の多数の銀河系の大半が我々から遠ざかっているという事実です。
二、三の例外を除き全ての銀河系が我々より遠ざかり、遠方のものほど高速で遠ざかっているという事実は、宇宙全体が膨張しているということを物語っています。
それはスペクトルを測定し、赤方偏移(スペクトルが赤にずれる)が観測されている ことから判明しました。
これはドップラー効果といわれる現象でエネルギーが小さくなることを意味します。
つまり、遠方の多数の銀河系から降り注ぐエネルギーは、どんどん小さくなることになり、夜空を明るくしないわけです。
だから、万一宇宙の膨張が止まったり縮小し出すと、たいへん困ったことになるわけです。
宇宙は、高温の世界となり、生命は存在し得なくなるでしょう。
Q2.銀河系とは何ですか。アンドロメダ大星雲と我々の銀河系とは、別の小宇宙なのですか。
A2.銀河系というのは、我々の太陽系を含む恒星系と星間物質を含む小宇宙です。
以前は、アンドロメダ銀河も我々の銀河系内の天体だと考えられていました。というより小宇宙という考え方がなかったのですが。
アンドロメダ銀河が、実は恒星の大集団であることが判明し、さらにその中に含まれるケフェイドの変光周期などを観測することで、その距離が測定されるようになりました。
すると驚くべきことにアンドロメダ銀河が非常に遠距離にあることがわかり、我々の銀河系とは別の小宇宙であることが明確になったのです。
しかし我々の銀河系もアンドロメダ銀河も同格の銀河であり、我々が観測するアンドロメダ銀河の姿はそのまま我々の銀河系の姿でもあると言えます。
Q3.我が銀河系の形はどのようになっていますか。
A3.銀河系は、一口でいうと円盤状に恒星が集まり、渦巻いているといえます。
銀河系を横から見ると、下の図のようになっていると考えられています。
銀河円盤の直径は約10万光年あり、その中央部は、バルジと呼ばれる膨らんだ部分があり、その厚みは約1万5000光年である。
さらに太陽系は、銀河中心部から2万8000光年の位置にある。
バルジの周辺には、球状星団が分布している。
銀河中心方向は、太陽系から見ると、いて座の方向にある。
従来は、太陽系からでは星間物質に遮られて可視光線では観測できない部分が多く、銀河系の構造がなかなか掴めなかったのですが、最近では電波技術の向上により、銀河系の全体像がわかるようになったのです。
天の川というのは、銀河円盤を太陽系から見た様子である。
銀河系を横から見た図
Q4.アンドロメダ銀河をよく見ると渦巻き状の模様が見えますが、どうしてでしょうか。
A4.アンドロメダ銀河をよく観察すると、確かに渦巻き状の模様があります。
これは、もちろん銀河が回転しているためですが、渦巻いているのは、恒星だけではなく、星間物質もいっしょに回転しているのです。
この外周部で渦巻いている部分を渦状腕と呼びます。
実は、太陽系もオリオン腕と呼ばれる渦状腕の中にいます。
渦状腕の中では、ちりが多いので新たに恒星が生まれているが、それ以外の部分では、ほとんど恒星が誕生してこないのです。
渦状腕の中の恒星は種族Tと呼ばれていて、太陽もこの仲間です。
これらの恒星は、ちりをたくさん集めるために、質量が大きく、明るく激しい性質のものが含まれています。
それ以外の部分の恒星を種族Uと呼ばれて、これが宇宙の恒星の98%を占めるといわれています。
つまり、我々の太陽は、少数派なわけです。
ただし、太陽は種族Tではありますが、古い落ち着いた星なので、心配はありません。
しかし大マゼラン雲などは、その腕の部分がない不規則銀河です。
腕がないということは、新たに星が生まれてこないので、古い星ばかりとなり、赤みを帯びた星が増えてきます。
銀河系も歳を追うと次第にちりが減ってくるので、腕がはっきりしなくなり、やがては大マゼラン雲のようにちりがなくなり、古い赤みを帯びた星ばかりになってしまうでしょう。
銀河系を上から見た図
銀河系を上から見た図
Q5.銀河系の質量は、どれくらいでしょうか。
A5.銀河系の質量は、4×1041キログラムといわれています。
太陽の質量は、2×1030グラムなので、銀河系は太陽2000億個分の質量ということになります。
これは、銀河系の回転速度から求めたものですが、恒星以外の星間物質も含めた質量です。
銀河系には、目で見える物質以外にもダークマターと呼ばれる目で見えない物質があるのではないかというのは、このためです。
ダークマターは、銀河系だけでなく、銀河系外の宇宙空間を満たしていると考えられていますが、その正体はまったく分かっていません。
Q6.銀河系の年齢は、どれくらいでしょうか。
A6.これはなかなか難しい問題ですが、銀河系内に含まれる古い星の年齢を決定すれば、ある程度推測できます。
銀河系内で古い星は、球状星団に含まれる恒星がそれにあたります。
球状星団は、その銀河系が誕生して以来の古い星団ですので、その年齢を調べればいいわけです。
実際に調べてみると、100億年以上の古い星があり、中には140億年ほどの年齢の星もあります。
現在では、銀河系の年齢は、140億年〜150億年と考えられています。
我々の太陽系の年齢は、46億年ですのでそれより100億年も古いわけです。
Q7.ブラックホールとは何ですか。どこにあるのですか。
A7.ブラックホールは、質量の大きい恒星が赤色超巨星となって、やがて超新星爆発を起こしたときに強大な重力によって中心に向かって収縮し、光も逃げ出せない重力を持つようになった天体を指します。
ブラックホールは、光も電波も逃げ出せない天体なので直接観測するのは困難ですが、近くに別の恒星があるとその恒星からガスがブラックホールへ流れ込むので、観測が可能になります。
現在は、銀河系の中心にあるいて座Aスターや、はくちょう座X−1、アンドロメダ銀河の中心にもブラックホールがあると考えられている。
つまり、銀河の中心にブラックホールがあるケースが多いことが最近わかってきたわけです。
クエーサーなども、中心にはブラックホールがあると考えられています。
これらの天体は、通常の恒星では考えられないほどのエネルギーを放出しています。
いて座Aスターは、銀河系中心にある天体で強力な電波を放射しています。
まったく謎の天体ですが、これが最近ではブラックホールではないかと考えられています。
またM31アンドロメダ銀河の中心部にもブラックホールらしい天体があることが観測されています。
いて座Aスター
いて座Aスター
M31アンドロメダ大星雲の中心部
M31中心部
Q8.我々の銀河系以外の銀河には、どんなものが観測されているのですか。
A8.いわゆるM31などの銀河は多数観測されていますが、もちろん非常に遠距離にあるのでほとんどが望遠鏡を使わないと観測できません。しかし何といっても、小口径でも楽しめる系外星雲の代表は、やはりM31アンドロメダ銀河でしょう。

系外銀河 所属 等級 視直径 分類
M31 アンドロメダ座 4.8 160×35 Sb
M33 さんかく座 6.7 65×35 Sc
M51 りょうけん座 8.1 10×5.5 Sc
M64 かみのけ座 8.8 6.5×3.2 Sb
M81 おおぐま座 7.9 21×9.8 Sb
M82 おおぐま座 8.8 9×4 Pec
M101 おおぐま座 9.6 22×22 Sc
M104 おとめ座 8.7 6×2.5 Sb
系外銀河の大半は、天の川にかからない、星がまばらな方向で多数観測されていて、例えばいて座方向のように銀河系中心方向では星間物質に遮られて系外銀河は観測できません。
しかしかみのけ座、おとめ座、ヘルクレス座などでは、多数の系外銀河が観測できます。
左の写真は、ヘルクレス座銀河団を撮影したものです。
よく見ると、いろんな形の銀河が多数映っています。
このように銀河が集まっている集団を銀河団と呼びます。
かみのけ座やおとめ座にも銀河団が観測されています。
下表は、主な系外星雲の一覧表です。 
ヘルクレス座銀河団
ヘルクレス座星雲団
Q9.クエーサーとは、どんな天体ですか。

A9.クエーサー(準星)とは、非常に遠距離にあって、恒星のように見える天体です。クエーサーと銀河
その距離は、数十億光年以上であり、膨大なエネルギーを放出し続けています。
通常の恒星では考えられないほどのエネルギーのため正体がわからなかったが、現在では中心部が特別に活動的な銀河であると考えられています。
さらに中心部にブラックホールがあると考えられています。
クエーサー(quasar)という単語は、もとは「星のように見える電波源(quasi-stellar radio source)」をあらわしていたものです。
クエーサーはもともと電波放射をすることによって発見されたものですが、現在知られているクエーサーのうち強力な電波の放射をするものは、ほんの10%しかありません。このようなクエーサーは現在、電波の強いクエーサー(radio-loud quasar)と呼ばれています。
強い電波の放射がないクエーサーは、電波の弱いクエーサー(radio-quiet quasar)と呼ばれています。
何が電波の弱いクエーサーと電波の強いクエーサーを分ける原因となっているのかはまだわかっていません。
クエーサーは、いずれも遙か遠方にあり、高速で遠ざかっているため、そのスペクトルは赤色偏差を示しています。
最も近いクエーサーでも約8億光年の位置にあります。 
この写真は、NASAのハッブル宇宙望遠鏡を使って撮影されたものです。
中央に見えるのはNGC 4319という渦巻き銀河で、地球からおよそ8000万光年離れています。
一方、右上に見えるのはMrk205というクエーサーで、距離は約10億光年です。
ともにりゅう座の方向にあって、たまたまハッブル宇宙望遠鏡の同一視野内に見えているだけなのです。
Mrk 205の10億年という距離は、クエーサーとしては比較的近いものです。
クエーサーの中心には巨大なブラックホールがあると考えられており、そこにガスが流れ込むことによって非常に明るく輝いて見えるのです。
また、ハッブル宇宙望遠鏡のような強力な望遠鏡を使えば、クエーサーの周りに光るハロも捉えることができます。Mrk 205のすぐ左下には伴銀河が見えていて、ハロの構造に影響を与えています。

Q10.銀河とアンドロメダ銀河が衝突するかもしれないって本当ですか?
そうなったとき、恒星同士が次々に衝突して両方の銀河系が壊滅するのではないですか?
A10.確かに両銀河が接近しつつあるのは事実です。
宇宙の膨張により、各銀河系は、その距離を次第に広げているのが普通ですが、この2つは、距離が近いので引き寄せ合っているわけです。
このままだといずれ衝突するのは確実です。

しかし、そうなったとしても恒星同士の衝突は、まず起こらないと考えるべきです。
恒星と恒星の距離は、非常に大きいので銀河同士の衝突の方が確率が大きいのです。
実際に銀河同士が衝突しても、何事も起こらないから心配は無用です。
ただし、星間物質への衝撃などの理由でスターバースト(星の爆発的生成)が発生する可能性もありますが、その頃には星間物質も少なくなっていて、あまりそんな現象も発生しないでしょう。
実は、系外銀河を観測すると2つ以上の銀河が衝突したと思われる銀河がかなり存在することがわかるので、銀河同士の衝突はさほど珍しいことではないのでしょう。
Q11.銀河と銀河の間にあるダークマターとは何か?
A11.例えば銀河とアンドロメダ銀河の間には、光る物質はありません。
しかし何もないのかというとそうではなくて、宇宙は光では見えない物質で満たされていると考えられています。
この物質を「ダークマター」(暗黒物質)と呼んでいますが、その正体は、まったく分かっていません。
しかし宇宙の総質量が光で見える物質の総質量よりはるかに大きいので、何かが存在することは確実です。