恒星Q&A 恒星全般に関する疑問にお答えします ![]() |
Q1.夜空に輝く星々も太陽と同じ恒星だということですが、ほんとうですか | ||||
A1.我々の太陽も夜空に輝く星々も、同じ恒星です。恒星は、自分で膨大な光を出し続けています。 これは、恒星が水素からできていて内部で核融合反応が起こり、膨大なエネルギーを放出しているからです。 水素原子4個が融合すると、ヘリウム原子が1個できるのですが、その際に膨大なエネルギーを放出するわけです。 ヘリウム原子もさらにもっと重い原子に融合するので、核融合の原料には事欠きません。 しかし、核融合の原料が次第に少なくなっていくので、いずれは燃え尽きてしまうことになります。 その寿命は、その恒星の質量が大きいほど短くなります。 なぜなら質量が大きいほど、内部の圧力も高くなり温度も高いので、核融合が激しくなり燃料の水素を早く消耗してしまうからです。 恒星の質量は、ほとんどの場合、太陽の10倍から1/10程度の範囲です。それより重くても軽くても恒星としては安定して存在できません。 我々の太陽は、寿命が約100億年と考えられていますが、既に46億年が過ぎているので寿命の約半分が経過したわけです。 |
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Q2.恒星の一生は、どんな経過をたどるのですか。 | ||||
A2.恒星は、星間ガスが超新星の爆発などの要因で凝縮を始め、星間分子雲を形成し重力でさらに凝縮し、やがて原始太陽系星雲が誕生します。 その内部には、原始太陽が形成されます。M42オリオン座大星雲などがちょうどこれにあたります。この中から多数の恒星が誕生してくるわけです。 そして一人前の恒星として光り出した恒星は、主系列星として進化を始めます。 そして進化を続けるに従って、表面温度が低下し始めます。 水素をある程度使うとヘリウムが燃えだして、次第に赤く膨らみ始めます。 これを赤色巨星と呼びます。あとは、その恒星の質量によって異なります。 太陽程度の質量を持つ恒星は、赤色巨星となり赤く膨らんでいき、惑星系を飲み込んでいきます。 最期にはさらに拡散を続けて、中心に白色矮星を残します。 太陽よりも5〜6倍程度以上の質量を持つ恒星は、寿命が尽きかけると赤色超巨星になり大きく脹らみます。 これは、オリオン座のベテルギュースやさそり座のアンタレスがこれにあたります。 そして、いずれは超新星となって爆発し、質量があまり大きくないと、すべて吹き飛んでしまいます。 質量が大きい場合、中心に中性子星を残すことがあります。 これはM1かに星雲がそれにあたります。かに星雲の爆発は、1054年に日本と中国で観測されています。 さらに質量が大きいと強大な重力により、ブラックホールになると考えられています。 ブラックホールは、光も電波も吸い込んでしまうと考えられているので直接観測することはできません。 間接的に電波を発生させたりするので、ブラックホールらしい天体はいくつか観測されています。 最近では、いて座Aという電波源が銀河中心にあるブラックホールから出ているものではないかと考えられています。 恒星の最後は、質量の軽い方から白色矮星、超新星爆発、さらに中性子星、ブラックホールとなるというわけです。 |
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Q3.実際に望遠鏡で観測すると連星系を構成する恒星が多いのですが、どうしてですか。 | ||||
A3.実は、恒星の7割は複数の恒星から構成される連星系が占めると言われています。 恒星が誕生してくる際には、単独で生まれてくるのではなく、複数の恒星が同時に誕生してきます。 散開星団と呼ばれる星団は、その典型です。M45プレアデス星団などは、その代表的なもので多数の若く明るい恒星が密集しているわけです。 散開星団ほどではない場合は、数個の恒星が集まって存在している場合もあり、これらを連星系と呼んでいるわけです。 連星系は、3個以上だと不安定で、はじき出される恒星も出る場合があります。 |
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Q4.恒星までの距離は、どのように測定するのでしょうか。 | ||||
A4.比較的近距離にある恒星までの距離は、視差を測定すれば確実にわかります。 視差を測定する考え方は、下図のとおりです。 |
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地球が太陽の周りを回っていることを利用して、そのわずかな位置のずれを写真で測定し、角度(視差)を求めることができます。 この角度を求めることができれば、地球と太陽の距離は既知ですので(距離が近いので測定方法はいろいろあります。)、三角測量の要領で地球と恒星の距離が計算できます。 ただし、遠距離になると視差が小さすぎて測定が難しくなるので、比較的遠距離にある星団や系外星雲などはこの方法では距離が測定できません。 そこで、もう一つの方法として、ケフェウス型変光星のみかけの光度と変光周期を測定することで、それが含まれる星団等の距離が測定できます。 ケフェウス型変光星は、規則的に変光する恒星ですがスペクトルを調べてみると大きくなったり小さくなったりしています。 そしてさらに驚くべきことに変光周期が同じケフェウス型変光星は、本当の光度も同じなのです。 ただし、ケフェウス型変光星にも大きく分けて2種類があり、種族Tに含まれるタイプと種族Uに含まれるタイプがあり、それぞれ光度が異なります。 種族Tに属する恒星は、ちょうど銀河の腕の中に含まれる恒星で我々の太陽もこの中に含まれます。 それ以外の恒星は種族Uに含まれ、これが宇宙の恒星の98%を占めます。 一般に種族Tの恒星は、若く明るい恒星を含み、アンドロメダ大星雲を観測して、これらの明るい種族Tのケフェウス型変光星の変光周期が観測されるようになり、光度と変光周期の関係が明らかになったわけです。 ただし実際のケフェウス型変光星の距離がなかなか測定できず、種族の違いによる光度の違いにも当初は気づかなかったので、正しい距離が測定できなかったのです。 つまり当初は、小マゼラン雲や球状星団に含まれるケフェウス型変光星の変光周期を測定し、それらの距離を決定したのですが、それをアンドロメダ大星雲などの系外星雲にも適用したので、過誤が生じたのです。 というのは、小マゼラン雲や球状星団に含まれるケフェウス型変光星は全て種族Uなのに、アンドロメダ大星雲で観測されたケフェウス型変光星は種族Tでした。 種族Tのケフェウス型変光星は種族Uのケフェウス型変光星よりも4〜5倍明るいので、当初はアンドロメダ大星雲の距離が75万光年程度と考えられていたのですが、いくつかの矛盾点に気づいたことがきっかけで、種族の違いにより実際の光度も異なることが判明して、アンドロメダ大星雲の距離が3倍に伸びたわけです。 これにより、かなり遠距離の系外星雲であってもケフェウス型変光星が含まれれば簡単に距離が測定できるようになったわけです。 |
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Q5.我々が宇宙を自由に旅行できるようになったとき、我々の太陽はどれくらい遠方から見ることができるのでしょうか? | ||||
A5.これは、我々の太陽の本当の明るさがどれだけかという問題です。 夜空に見える星は明るい星もあれば暗い星もあります。 明るい星は本当に明るいこともあるが、実は近いから明るく見えるだけで、暗い星は遠くにあるために暗く見え、本当の明るさはもっと明るいのかもしれません。 肉眼で見える恒星は、全天で8000個程度といわれていますが、我々は実はオリオンの腕の中にいるので、見える星もいわゆる種族Tの恒星が大半です。 これらの恒星は、たいへん明るい星を含んでいますので、一般的な場所より明るい星が多いところに住んでいると考えることができます。 しかし我々の太陽は、種族Tではありますがその中ではそんなに明るい方ではないのです。 しかしこれは比べる相手が悪いのであり、実際には宇宙全体の中では上位10%程度に入る明るさです。 恒星の実際の明るさは、恒星から10パーセク(32.6光年)の距離にあるとしたときの恒星の光度で表し、これを絶対等級と呼びます。 そしてわれわれの太陽の絶対等級は、4.86等です。 次の式は、絶対等級とその恒星との距離、見かけの等級の関係を表す式です。 M=m+5−5logD (第1式) M:絶対等級 m:見かけの等級 D:距離(パーセク) この式を使って太陽が例えば1等星で見える距離を求めてみます。 M=4.86 m=1を代入すると、 4.86=1+5−5logD logD=0.228となり、D=1.69パーセクとなります。 太陽から1.69パーセクの範囲にある恒星系は、ケンタウルス座アルファ星だけです。 要するにお隣さんからしか太陽は一等星として見ることができない訳です。 さらに太陽が肉眼で見える範囲はどれだけか、計算してみます。 6.5等星が肉眼で見える限界なので、 M=4.86 m=6.5を代入すると、 4.86=6.5+5−5logD logD=1.328となり、D=21.28パーセクとなります。 これは約70光年ということになりますが、銀河系全体からすればホンの一部分ということになります。 何しろ銀河系の直径は、10万光年もあるのです。 言い換えれば、我々が銀河系を自由に飛び回れるようになったとき、宇宙飛行士はおそらく我々の太陽を肉眼で見ることができないだろうといえます。 しかしこのことは太陽が暗い星だということではありません。 宇宙の恒星の大半は、赤色矮星と呼ばれるもっと暗い星であり、これらに比べると太陽はかなり明るい星だといえます。 もっと明るい星も多数存在しますが、それらは質量が大きく、よって内部が高温で放出するエネルギーが大きく、すぐに燃え尽きてしまうことになり、寿命が短いはかない星であるといえます。 |
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Q6.赤色超巨星とは、どんな星ですか。 | ||||
A6.ある程度質量の大きい恒星が、水素を使い果たしヘリウムが燃え始める状態になると、表面温度が低下し赤く膨らみ出します。 この状態の恒星を赤色超巨星と呼びます。 赤色超巨星は、太陽の数百倍以上の大きさを持っているが、表面温度は太陽より低く約3000℃〜3500℃程度になります。 よってスペクトル型はM型になります。 しかしこの状態になると、超新星になるのも時間の問題です。 超新星になると、爆発して中性子星になりますが、ブラックホールになる場合もあるといわれています。 |
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Q7.白色矮星とはどんな天体ですか。 | ||||
A7.白色矮星は、赤色巨星が最期を遂げ、ガスが拡散したあとに残る天体です。 恒星の燃えかすのはずの天体ですが、温度は高く、10000℃程度もあり、白く見えます。 ただし大きさは地球程度なので実際の光度は暗く、かなり近距離であっても大望遠鏡でないと観測できないケースが多いようです。 しかし太陽系の近傍にもかなりの白色矮星が発見されているので、そんなに珍しい天体ではないようです。 シリウスBやプロキオンBなど近傍の1等星の伴星も白色矮星であることがわかっています。 しかしどうして燃えかすの星なのに温度が高いのかは、よくわかっていません。 |
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Q8.赤色矮星とはどんな天体ですか。 | ||||
Q8.赤色矮星は、質量が小さく、表面温度も低く、従って暗く赤い恒星です。 かなり暗い天体なので、かなり近傍にある赤色矮星でないと、こちらからの観測ができないのですが、大望遠鏡を使って観測すると宇宙の大多数の恒星は、実はこの赤色矮星であるということがわかるようになりました。 太陽系の近傍16光年以内にある星系を調べてみると、52個の恒星があり、そのうちの35個が赤色矮星であるということが判明しています。 この中には、赤色超巨星などは1つもなく、(あったら怖いですが)、かなり遠方へ行かないと存在しません。 |
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Q9.中性子星とはどんな天体ですか。 | ||||
Q9.中性子星とは、超新星が爆発したあと、強大な重力により内部に収縮して原子核が重力によりつぶれていき、中性子でぎゅうぎゅうに押し固められた天体です。1cm2あたりの質量は、10億トンもあるといわれています。大きさは、10キロ程度と考えられています。 質量が大きいとさらに収縮してブラックホールになるといわれています。 中性子星の実例は、M1かに星雲のなかからパルスが放射されていて、これが内部の中性子星から出ているといわれています。 このようにパルスを放射している中性子星をパルサーと呼びます。 中性子星は、非常な高速で回転していることも、このことでわかります。 実際、かに星雲のパルサーは、0.033秒の周期でパルスを発信しているので、この中性子星は1秒間に30回転もしていることになります。 どうしてこんなに高速で回転しているかというと、大きな質量を持つ恒星は、もともと高速で回転していたが、重力のバランスが崩れて極めて小さい範囲に押し固められてしまったので、角運動量保存則から考えると、高速で回転することになっても不思議はありません。 角運動量は、距離の2乗に比例し、回転速度比例します。 つまり、距離が極めて小さくなったとき、角運動量を保つには回転速度が大きくなるのです。 |
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Q10.超新星と呼ばれる星は、どんな星ですか。 | ||||
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Q11.変光星とは、どんな星ですか。 | ||||
A11.変光星とは、恒星の中でも光度を変えるものを指します。 しかし、それにもいくつかの種類があります。 @食変光星は、連星が相手の星の光を遮るために光度が変化するもので、本当に光度が変化しているわけではない。 A脈動変光星は、星の大きさと表面温度が変動し、そのため本当に光度が変わるものです。 B不規則変光星は、不規則に変光するものです。 C新星は、長い周期で星の一部を爆発させて、急激に明るくなるものです。 超新星も、変光するので変光星ともいえますが、ここでは含めないこととします。 @〜Cの各変光星の詳細は、それぞれの説明を参照してください。 |
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Q12.食変光星とは、どんな変光星ですか。 | ||||
A12.食変光星は、連星系に存在する変光星です。 下の図は、食変光星の仕組みを説明したものです。 |
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地球から見て、主星の手前に伴星が来ると、主星の光を遮って暗くなるし、逆に伴星が主星に遮られても、光度が落ちる。 このため伴星の公転周期の間に2回光度が落ち込むことになる。 このような食変光星は、変光周期が規則的で変光光度も一定である。 代表的な例としては、アルゴル型変光星がこれに当たります。 ペルセウス座のアルゴルは、変光周期が2日20時間48分59.5秒の間に2.3等から3.5等に変光します。 |
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Q13.脈動変光星とは、どんな変光星ですか。 | ||||
A13.脈動変光星は、星の大きさが変動し、表面温度も変動するため、実際に光度が変化する変光星です。 この種の変光星のうち、変光周期が一定で50日以内であり、変光するリズムも一定である規則変光星をケフェウス型変光星と呼んでいます。 この種の変光星は、変光周期を測定するだけで絶対等級が計算できるので、遠方の系外星雲などの距離を測定するのに利用されている。 また、変光周期が長く、変光光度の範囲も必ずしも一定でないミラ型変光星もあります。 くじら座のミラは、330日の周期で2等から10等まで変更する長周期変光星です。 また、さそり座のアンタレスやオリオン座のベテルギュースも変光範囲は小さいもののミラ型変光星です。 これらに共通していることは、赤色超巨星であるということである。 寿命が近づいているため、星の内部も不安定になり、不規則に脈動しているのだと考えられている。 |
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Q14.新星とは、どんな星ですか。 | ||||
A14.新星とは、非常に長い周期で爆発して一時的に光度を増す恒星です。 変光星の一種ですが、実は連星系の一方がもう一方の星からガスを取り込み、爆発しているのです。 新星は、超新星とちがって完全に吹き飛んでしまうわけではないので、それほど光度が上がるわけではありません。 |
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Q15.夜空に見える恒星も、よく見ると色がそれぞれ違って見えます。赤く光るアンタレス、青白い光を放つリゲルなど、1等星と呼ばれる明るい星にも色の違いがあります。これはどうしてでしょうか。 | ||||
A15.これは、その恒星の表面温度によって色がちがってみえるのです。逆にいえば、表面温度を光の色で調べることができるわけです。 これらの星の光の色は、スペクトル型によって区別されます。スペクトル型は、温度が高い方から R型→ N型 ↑ O型(青白い星)→B型(青白い星)→A型(白い星)→F型(クリーム色)→G型(黄色い星)→K型(赤みがかった黄色)→M型(赤い星) ↓ S型 となり、星の進化もこの順に進みます。 スペクトル型がM型で赤く明るい星は、赤色超巨星である場合が多く、寿命が尽きかけた星です。 さそり座のアンタレスやオリオン座のベテルギュースなどがスペクトル型がM型の代表的な星です。 この種の星は、表面温度が3,000℃程度しかありません。 逆にO型の青い星は、まだ生まれたばかりの若く明るい星です。スペクトル型がO型の場合、表面温度は30,000℃にも達します。 この種の星は、オリオン座に多数観測できます。 オリオン座のリゲルは、スペクトル型がB型で、きわめて明るい星です。その表面温度は、12,000℃にも達します。 おおいぬ座のシリウスは、スペクトル型がA型です。表面温度は、9,000℃程度です。 こいぬ座のプロキオンは、F型です。 スペクトル型がK型の星としては、おうし座のアークチュルスがあります。 我々の太陽は、スペクトル型がG型の黄色い星です。その表面温度は、6,000℃程度です。 太陽のような矮星(小さな星)を主系列星と呼びます。 |